東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)2号 判決
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〔判決理由〕二、そこで、本件補正却下の決定に対する原告主張の違法理由について、以下判断することとする。
1 原告の主張第三項1について
拒絶査定に対する審判は、査定の当否を判断するために、審査手続の続行として、さらに事件の審理を行なうのであり、法令の解釈、適用のやり直しだけでなく、事実認定をもやり直す(実用新案法第四一条、特許法第一五八条、第一五九条参照)のであるから、本件補正書が審査段階において問題とされなかつたとしても、審判手続の過程において再審理のうえ許されない場合には却下されることは当然であり、この場合補正却下の決定をするに当たり、拒絶査定の場合のようにその理由の通知をする必要は法律上要求されていないところであるし、また、審問をしなければならないものでもないから、原告の指摘するような本件補正却下の決定に関する手続上の事実は、何ら職権乱用に当たるというをえないものであり、原告の右主張は採用するに由ない。
2 同項2について
(一) 原出願の願書ならびに添附の明細書および図面によると、原出願当初の明細書の「当明の詳細な説明」の項には、「第4図に於て鉄板18'を外函25にて固定するか外函25にて鉄板18'を兼用せしめてインゼクションモードのステム17又は型に接点弾条を入れて絶縁材を固まらして作つたステム17にステム17に作られた溝又は穴より捲線リードを出しながら外函25を挿入して継電器を作る、此の場合捲線リードは捲線弾条15、16等の根元に捲き付け半田あげする。但し図面はトップカバー式であるらか第1図のように布線し試験調整後トップカバーをつける。第1図に於てもステム17は同様に作られるが鉄板18がステム17に挿入されトップカバー19を鉄板18に固定し捲線リードを弾条15、16等に取付け外部磁路20を嵌め込む。と記載されていることが認められる。この記載事実に原出願の願書添附の図面の記載を合わせ考えると、図面第4図の場合、ステム17はインジエクションモールドか、または型に接点弾条を入れ、絶縁材を固まらせて作られ、このステムには捲線リードを出すための穴または溝が設けられ、この穴または溝から捲線リードを出しながら外函25を挿入するものであり、また、第1図の場合は、ステムは右と同様に作られるが、鉄板18、18'をステム17に挿入してトップカバー19を鉄板18、18'に固定し、捲線リードを弾条15、16等に取り付け外部磁路20、20'を嵌め込む構成であることが明らかである。右の構成によると、ステム17はインジエクョンモールドや型で作られるのであるから、ステム17に接点弾条が合成樹脂(絶縁材)で固定されることは明らかであり、また、捲線端子について、これをステム17に固定するかどうかについての明示の記載はないが、継電器として十分な機能を得しめるためには、右の捲線端子がステム17に固定されることを要することは技術上当然のことと考えられるし、図面の第1図または第6図からも捲線端子が接点弾条群と同様にステムに固定されるか、またはステムに設けられた穴に挿入固定されるものであることを優に認めることができる。そして、この挿入の場合の固定手段として、合成樹脂等の接着剤を使用することは、原出願当時他の分野でこの種挿入固定の手段として接着剤が用いられていることは公知であること(この点は被告の明らかに争わないところである。)に徴し、自明の手段と認めるのが相当である。また、外函25(第4図の場合)または鉄板18、18'(第1図の場合)については、これをステムに挿入すると記載され、固定するかどうかについて限定されていないが、外函25または鉄板18、18'が固定されず、がたつく場合には継電器として用をなさないこと、図面(第4図および第1図)の記載および前記認定のとおり第1図について「鉄板18がステム17に挿入され……外部磁路20を嵌め込む。」との記載があり、「挿入」と「嵌め込む」と用語を区別していることに徴すれば、「挿入」の語は、外函25(第4図の場合)または鉄板18、18'(第1図の場合)がステム17に固着されることを意味すること明らかであり、その固着手段について特段の限定はないが、この場合も前段説示と同様の理由から合成樹脂等の接着剤が使用されることがあることは明示するまでもなく、当然のことといわなければならない。
以上認定したところからすると、原出願当初の明細書および図面には、外函、接点弾条群および捲線端子を合成樹脂で固定し、ステムを作るとの技術構成ないし技術思想が表示されているものとみるのが相当である。
(二) 被告は、原告が本件補正書と同日付で提出した意見書の記載に徴し、外函は内部の点検調整等が自由にできるようステムに固定されているもので簡単な取外しができないような合成樹脂等の接着剤で固定されるものでない旨主張し、昭和三九年九月二一日付意見書には被告主張の記載がみられるけれども、一方本件補正書によると、右の意見書と同日付で提出された本件補正書添附の明細書(説明書とあるけれども、明白な誤記と認められる。)の「考案の詳細な説明」の項に「外函20、20'は簡単に取外しが出来るので再調整或は点検に非常に便利である」との記載があり、この両記載を彼此対照するとともに前記認定のとおり原出願当初の明細書に外部磁路(外函)20、20'を嵌着する構造が示されている点を考慮すると、意見書中「外函が(18)、(18)'、(20)、(20)'の四部分に分離し、(18)、(18)'が接点弾条群や捲線端子等と共に合成樹脂のステム17に固定され、」の記載に続く、「内部の点検調整等が必要な時自由に出来るようにし、」とある記載は、「内部の点検調整等が必要な時自由に出来るように、との記載の誤りであり、後段の「(20)、(20)'……」にかかる語句であることは明らかである。したがつて、右意見書の記載を根拠にして原出願当初の明細書および図面には外函をステムに合成樹脂の接着剤で固定するものでないとの技術思想が示されているとの被告主張は採用できない。
(三) してみれば、原出願当初の明細書および図面には、本件補正書の実用新案登録請求の範囲に記載された考案の構成要件の一部をなす「接点弾条群(10、11、12、13、14等)及び捲線端子(15、16等)と共に外函(18)、(18)'を合成樹脂にて固定し、ステム17を作る」ことについての記載があるものと認めるべきであり、この認定と異なり、本件補正却下の決定が原出願当初の明細書および図面にはこの点を表現する記載がないことを理由に本件補正をもつて要旨を変更するものとしたことは、事実の認定を誤つたもので違法といわなければならない。
三、以上の次第であるから、本件補正の却下決定は違法であつて、取消しを免れないものであり、その取消しを求める原告の本訴請求は理由があるから、これを正当として認容……する。(柳川真佐夫 武居二郎 楠賢二)